スタッフの声

Being Digital in Orthodontics

有本 博英 矯正歯科医

2018.04.30

Being Digital in Orthodontics とでもいうと良いのでしょうか。4月26日は成人矯正学会の春季セミナーで講演をしてきました。

お題はデジタル矯正についてということだったのですが、僕は治療内容や症例の話ではなく、マウスピース型矯正装置(インビザライン ・薬機法対象外)の治療中心にシフトしてきたここ数年で、自分なりに体感する矯正治療全体のエコシステム/文化生態系の変化について、ニコラス=ネグロポンテの95年の名著を参考にまとめました。

 

デジタル化におけるインパクトの本質は atom (物質)から bit (情報)へということです。95年の時点で将来新聞や本は直接インターネットから購入するようになると予言したのがニコラス=ネグロポンテです。実際彼が『予言』したほとんどのことは実現しています。

 

その変化は iPhone で電話が再発明された2007年から急速に起こりました。

reinvent phone

 

iPhone以前は電車の中でみんな新聞や雑誌、漫画などを読んでいたわけですが、それは、ほぼほぼ『読む』ということのみをしていたわけです。

しかし、iPhone以降、電車の中ではみんなスマホの小さな画面をのぞいています。それは、何をしているのか?『本・雑誌を読む』『音楽を聴く』『ニュースを読む・見る』『映画を見る』『テレビを見る』『勉強する』『メールを打つ』『チャットする』『買い物をする』『家電をコントロールする』『レストランの予約をする』『飛行機のチケットを取る』『ゲームをする』『写真の整理や加工をする』など、ありとあらゆることをしています。ここで時間に対する価値観が大きく変化しました。スキマ時間が重要な意味を持つようになったからです。

それもこれも、bit 化とそのbitを快適に扱うインターフェイスを備えたデバイス(iPhone)が発明されたからです。時間価値の変化と矯正治療についてもこれまでにいろんなところで講演しましたがそれはまたの機会に。

 

では矯正治療の世界ではどうでしょう?だいたい90年代後半から写真のデジタル化が始まり、2000年初頭からレントゲンのデジタル化が始まります。しかし、本当にインパクトがあったのは2015年ごろ、日本では昨年2017年の口腔内スキャナー iTero Element の販売が解禁されてからです。これで、歯列の情報が bit 化され、マウスピース型矯正装置(インビザライン ・薬機法対象外)設計ソフトウェアであるクリンチェックというインターフェイスに乗せることが極めて簡便にできるようになったのです。

clincheck

これにより、矯正歯科医の主だった仕事のメインステージはチェアサイドではなく、コンピューター上に移りました。そしてチェアサイドで活躍する歯科衛生士やコーディネーターの仕事も大きく変わり、治療成功のためのコミュニケーションがますます重要な役割を果たすようになりました。さらには患者さんをいかにうまく巻き込むか?ということが矯正治療成功のカギとなってきました。

このような変化の結果、デジタルへのシフトはこれまでよりも、矯正治療で患者さんの人生をより良いものに変化させるという矯正治療の本質により近づいているのではないかと思うのです。

 

だいたいこのようなお話をさせていただきました。患者さんを巻き込み、スタッフを輝かせる大きな変化の波、矯正治療の必要な人たちがまだまだいっぱいいるけれど、価値を伝えきれていない日本社会こそ歓迎すべき波だと思いますが、いかがですか?矯正専門の皆さん。

最後に講演でもこの言葉で締めくくりましたが

 

デジタルへの移行は今ここにあり、決して後戻りすることはない。

 

ということですね。ではでは。

 

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