専門医の連携治療
専門医連携治療を選択する意味
2013.12.31
こんにちは。有本博英です。
政治と医療というのは似たところがあって,それは,いったん選ぶと自分にとって絶対的権力になってしまうということです。
いったん政権を握った政府に,後から何を文句を言おうがもう変えることはとても難しい。そして,いったん医者にかかってしまえば実際のところ,その医者がどんな治療をやってるのか確かめるのは非常に難しく,治療が始まれば患者はほとんどもうまな板の鯉です。
だから,医療も政治も監視役が必要です。
政治の世界では与党に対する野党とか,テレビや新聞などのメディアやいわゆるジャーナリズムが監視役をになうべきでしょう。その意味で,野党やメディアの存在意義は政府にとにかく批判的な意見を提示することです。反対意見を突きつけて,それに対して政府がきちんと対応しながら最良を模索するというのが本来のメディアと政権の関係でしょう。政権に都合のいいことばかり言うメディアはただの御用機関であって,国民にとってほとんど存在価値はありません。
では医療はどうか。監視役はだれでしょうか?
小さな治療の場合,監視役は存在しません。歯科においても保険診療の範囲だと監視役はまずいない。小さい治療ですのでそんなに大きな問題になることは無いのですが,矯正治療に来られた患者さんで,昔虫歯の治療をしていたというような場合,なんでこんな治療になってるのだろう?と言うようなケースはよく見ます。これは監視役がいないからです。
でも大きな治療の場合は監視役があった方がいい。そのような場合は専門医連携治療をお勧めします。いろいろな問題を解決しなければいけない大きな治療の場合,専門医同士がお互いに診断して共通のゴールを設定し,チーム医療をおこないます。これを専門医連携治療(インターディシプリナリートリートメント)といいます。チームの誰かが良くない治療をしたりゴールを間違えれば他のチームのドクターが困る。だからそもそも独りよがりの診断や治療をやりにくい構造です。アメリカなどでは専門医の治療が確立していて,こうした専門医連携治療もずいぶんすすんでいます。
ところが日本では,大きな治療でも,根管治療も虫歯も歯周病もインプラントも矯正もする,というスーパー(マーケット)デンティストによる治療がまだまだ多いのが現状です。しかしこれはどうしても独りよがりの治療になりやすい。誰も監視する人がいませんから権力が集中した状態なのです。歯科界なら誰でも名前を知っているような超有名なドクターが手がけた治療でも,別の専門医が診たらあり得ないことをやっているような治療が結構みられるのです。
インターネットやSNSができて,国民サイド・患者サイドも情報を集めることはますます簡単になってきました。いわゆるソーシャルシフトです。政治も医療もその在り方が変わって来るかもしれませんね。そんな中で,政治も医療も監視されることを極端に嫌うような場合は何か都合の悪いことがあるのかもしれません。