勝間和代 さんがインプラントになった本当(かも)の理由
有本博英 矯正歯科医
2013.07.10
こんにちは、有本博英です。 勝間和代 さんは僕も割と好きな作家さんの一人で、断る力とか起きている事はすべて正しいとかいろいろと参考になる本も多く、また、あれだけメディアに戦略的に出る行動力はすごいなと、素直に思います。
しかし、今朝の彼女のメルマガの記事を見て、元マッキンゼーコンサルタントでも客観的に分析するのって難しいのだなぁと、思うと同時に、医療情報って本当に伝える側の責任の大きさを感じました。
インプラントをいれる事になった原因が矯正???
以下、彼女の2013年7月10日朝配信されたメルマガから。
『歯科矯正のリスクとリターン』という題名の記事ですが、最近インプラント治療をされたようで、個人の支出の中で最も高価だったとおっしゃっています。そして、なぜその歯が悪くなったかという所で、
なぜインプラントをいれることになったかというと、これ、原因が
「歯科矯正の20年後」
だったんです。
ここまで読んだとき、僕の頭の中は???でした。
インプラントをいれる事になった原因が矯正ってどんな矯正???
どういうことかというと、奥歯で、生えるところが狭くて、内側にほぼ45度、倒れて生えてきた歯がありました。
歯科矯正で、少し左右を拡げて、この歯を立ち上げていたのですが、なんと数年前、おせんべいを食べていたら、その歯が
「ぼきっ、ばりばりーーー」
と折れました。その痛かったこと、痛かったこと、歯が折れた経験がある方はわかると思います。
なるほど、、、歯が折れたのですね。それは痛かったでしょう。で、その歯は20年前に傾斜していた歯であると。
なぜ折れたかというと、矯正時に、この歯を1年以上かけて、ゆっくり立ち上げたのですが、それでもなんと、歯の位置を移動すると、高い確率で
「根っこの骨が弱ったり、まわりに吸収されていく」
のです。
つまり、歯が老化するわけです。
そして、20代で立ち上げた私の歯は、20年後にばりばりーーーっと、折れました。
ここはおかしい。歯が折れるのは歯が物理的に弱いからであり、骨が弱ったり吸収されていく、のとは違います。それはむしろ歯周組織の問題、すなわち歯周病です。
また、矯正治療をしたからと言って、『高い確率で「根っこの骨が弱ったり、まわりに吸収されていく」』という事はありません(断言)。
歯の老化というのは、擦り耗りとか、エナメル質の結晶化が進むとか、歯根膜繊維の減少とか歯髄腔(歯の神経が入っている部分)の狭小はありますが、『根っこの骨が弱ったりまわりに吸収されていく』というのは老化ではなく、歯周病です。
つまり、推測するに、勝間さんの歯がばきっと折れて、しかも抜歯しなければならないほど骨吸収が起こっていた(と思われる)という原因は、『弱い歯』と『歯周病』の2つです。それは、20年前の矯正とは関係ありません。
インプラントを入れることになった原因の推測
ここからは全くの推測ですが、勝間さんは元々舌側(内側)傾斜していた臼歯(おそらく下顎第1大臼歯)が深い虫歯で、ティーンエイジャーの初期の頃に保険で治療してインレーかクラウンを入れていたのではないでしょうか?
その推測の理由
45度傾斜していたそうですが、そのような状態だと、歯みがきがしにくく、第1大臼歯(6番)という歯は最も虫歯になりやすい歯です。若い頃のこの歯の虫歯の進行は早く、神経をとらなければいけなくなる事が往々にしてあります。そして、この時期の歯はまだ歯髄腔(歯の神経が入っている部分)が広いので、神経をとると歯が薄くなってしまい、『弱い歯』が完成します。傾斜しているとなかなか治療も難しく、治療自体が不完全で、その後虫歯が徐々に進行した可能性もあります。また、矯正治療後の虫歯治療がこのような結果をもたらした可能性もあります。
また、若い頃の虫歯の治療は保険でするというのが『(誤った)常識』ですので、時間をかけてきちんと治療ができていない可能性があり、神経をとった後の詰め物も適合精度はそんなに期待できません。勝間さんのスマイル画像などをネットで見ますと、保険治療の詰め物をされているのが見られますが、こうした詰め物は精度的にも限界があり、どうしてもそこに物がつまりやすくなります。そこの部分に歯周病菌が繁殖し、骨が溶けると『歯周病』が完成します。また、そこから2次カリエスになって虫歯が進行していた可能性もあります。フロスなどできちんとメンテナンスされていれば、不適合充填物も発見しやすくなります。
矯正治療自体が歯を弱くする事があるのは歯根吸収という問題ですが、通常、この歯根吸収が20年後におせんべいを食べていたら歯が折れるなどという事態を引き起こす事はまずありません。
実は、木曜日夕方にお茶菓子を食べていたら、奥歯が「がきっ」という音がして、その後、すごく歯が痛くて調子が悪くて、でも、金曜日、土曜日と仕事がびっしりで、ようやくかかりつけの歯医者さんが時間外だけども、土曜日夜に見てくれたのですが、案の定、折れていました。
— 勝間和代 (@kazuyo_k) 2009年10月31日
勝間さんはメルマガの中で、
「人間の生活にとって、通常では存在し得ない負荷をかけると、その部分が老化する」
ということなのでしょう。
人間の体は消耗品であり、再生の回数には限界があるということをくれぐれも考慮しながら、いろいろな治療は選ばないといけないと思いました。
とにかく、歯科矯正経験者のみなさま、一度、歯の根っこの残り具合、確認することをお勧めします!!
と、まるで矯正治療を受けるときは慎重に、ともとれるメッセージを書かれていますが、通常では存在し得ない負荷をかけ続けたのは若いときの虫歯治療と、不適合な詰め物、不十分なメンテナンスなのです。
まぁ、ここに書いた事は僕の推測が正しければという事です。全く違うかも知れません。でももし間違っていたとしても、こういう人は本当たくさんいます。
それよりも、もし、勝間さんが20年前に矯正治療をされていなかったらどうなっていたでしょうか。45度に傾いた臼歯は多分今まで持っていないでしょうし、すてきなスマイルも得られていなかったでしょう。
今、矯正治療の恩恵を受けているのは日本人の5%に対してアメリカ人は50%以上。そして、80歳のときの残存歯数は日本人7本に対してアメリカ人21本。日本人はもっと健康に美しくなれるのです。
勝間さんが本の表紙にも堂々とスマイルで写真を載せられて、メディアでも活躍されているというのは、勝間さんが若い頃に矯正治療をしたからです。もし矯正治療を受けていなかったら、今の勝間和代はなかったでしょう。そのメリットを、勝間さんはどれだけ評価しておられるかどうかわかりませんが、勝間さんのようにグローバルに活躍されている方が、矯正治療経験者というのは、これからの時代、ある意味当然なことだとおもいます。そう、『起きていることは全て正しい』のです。
世界が舞台、のためのスマイル。イースマイルはいつでもお待ちしています。