専門医の連携治療
アメリカ矯正歯科医会と歯周病学会の合同会議
2013.02.11
こんにちは、有本博英です。
アメリカ、カリフォルニア州のパームスプリングスで開催された、AAO (アメリカ矯正歯科医会) と AAP (アメリカ歯周病学会) との合同会議に参加してきました。これは数年に一度開催される合同会議で、今回で3度目になります。
矯正治療は、歯を歯ぐきの中で動かす治療。つまり、歯ぐき(歯周組織)の状態を評価した上で矯正治療をする必要があります。30歳以上の成人ではほぼ50%以上が何らかの歯周病にかかっており(日本ではもっと罹患率は高い)、加えていうならば、先の九州矯正歯科学会で発表したように、歯の萌出が完了した後の歯ぐきは、その歯の位置づけに応じた形態から加齢変化が始まっています。こうした歯周の知識なしに矯正治療を行うのは歯根吸収や歯肉退縮など、とてもリスキーな事なのです。
今回の会議では、アメリカのドクターを中心として、最新のトピックが発表されました。
アメリカでは日本以上に歯科の中でも専門化が進んでおり、矯正歯科医がする治療と歯周病医がする治療というのは明確にわかれています。それゆえ最新の技術情報などを交換し、お互いにどういう事ができるのかを知識として知っておく必要があります。日本はここまで専門化は進んでいないので、いわゆるSuper Dentist(何でもやる歯科医)が多い状態ですが、やはり治療結果は歴然とした違いが見られます。お互いの客観的な治療結果やエビデンスに基づいた治療ができるからで、1人のドクターだとどうしても独善的な治療方針となるリスクがあるのです。会議ではこうした共通認識すべきといえる知識を整理して、わかりやすくプレゼンするドクターもいてとても勉強になります。
歯周病の治療にしても、矯正的に歯を動かす事が歯槽骨をつくるという性質を利用して治療する方法は、昔から行われていますが、その時にどのように力をかければ最も効率的に骨をつくる事ができるのかというような話題や、審美的な歯肉のラインをつくるために注意すべき事、矯正治療で必ず患者に説明しないといけない歯根吸収についての共通認識についての話題など、旧来の知識のアップデート的なテーマの発表もありました。特に、昨年引退宣言されたVince Kokich Srのプレゼンテーションは他の発表者に比して群を抜いてわかりやすいものでした。
そして、今後の連携治療にとって最先端の話題はやはり歯周再生治療と矯正治療を組み合わせたPAOOについての話題でしょう。今回はこのPAOOを世界で最初にWilckodonticsとして発表したWilcko兄弟の長期結果についての発表や、垂直的骨欠損に対する骨補填と圧下を組み合わす事で見事に骨再生が行われるという話、なぜコルチコトミーを行うと歯根吸収が起こりにくいかという話など、私たちにとっても初めてのトピックも多くあり、とても勉強になりました。
海外の学会に行くたびにオフィスをクローズしていくので、患者さんにはとてもご迷惑をおかけしますが、こうした知識はやはり積極的に取ってこないと勝手に入ってくる事はありません。この会議に参加していた日本人ドクターは、僕たち有本、篠原先生、山本先生を含め合計10名程度。これからも常に最新の知識を元に、安心できる治療を提供したいと考えています。
そしてこうしてアメリカに行くと、楽しみなのはアメリカならではの巨大ステーキと、小さな町にもあるアップルストアをのぞくこと。アメリカのステーキは脂肪分が少なく、噛みごたえのあるもので日本ではまず食べられません。また、アップルストアでは今回、芦屋オフィスで使えそうなiPadを支えるアームを見つけました。アップル驚異のエクスペリエンスにも書かれていますが、アップルストアのブライアン君はとてもフレンドリーで親切でした。